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伊藤恵子さんは国立音大でのプロのピアニストとして幅広い活動をなさる傍ら、なぜかアコーディオンに惹かれて、エキセルについで、黒鍵盤のノスタルジックデザイン、Guilietti
Traviata Specialをお買い求めいただいたのが2年とちょっと前。 Giulietti Traviata
Specialの音色、弾き心地には大満足をいただいているのですが、最近は豪華客船のクルージングのコンサートや演奏活動が日本国中に広がるにつれて、長期演奏旅行の移動用にはフルサイズのアコはやはり大変だということで、今回は重量の軽いものということで、サブマシンとしてご購入いただいたのがこちらのVictoria。 ピジョンブルーがエレガントな軽量機。 音色も心地よいMM音だけに絞り込み、レジスタ機構も思い切って切り捨て、軽さにこだわったアコの真髄を知る大人のためのコルト45。 MMができるならせめてMとMMはほしい、とか、どうせならLも加えれば音のチョイスがL、M、MM、LM、LMMと一気に5つも手に入るのに、と思うのが人情ながら、それをやると重いL笛一本とレジスタ機構が加わる。 わずかではあるものの、せっかく7kg以下に抑えられていたものが、8kgを超えるようになってしまう。 これにどうせなら、ベースもせめて2種類ぐらいつけたいなどと考えると8.5kgオーバーになってしまう。 で、この1kg前後の重量アップが長期演奏旅行の疲れた肩や腕にずっしりと、容赦なく乗っかってくる。 軽くするためには何かをあきらめなくてはならない。 Giulietti
Traviata
Specialのようなしっかりした作りの素晴らしい音色のアコに比べれば軽量アコの音色はやはり軽い。 ただ、軽量アコ重厚な音色を求めるというのは無い無い物ねだりなのだ。 若い恋人に分別・思慮・経験を求めても虚しく、熟年の恋人に若さをもとめてもつらいのと同じように、それぞれの良い点をうまく使いこなすという考え方が必要なのだ。 これは理屈はわかっちゃいるけど、なかなか踏ん切りがつかないのが人情。 大型機を弾いている人が小型機を弾くと、中トロのあとのコハダをたべたような気分になる。 すし通を気取る人は往々にしてネタを食べる順番のうんちくを語る癖があるようだが、そのコハダのうまさを知る者はそんな順番にはこだわらない。 そのコハダが新鮮で酢のしめかたも一流であれば。 大型アコにも品質の良しあしがあるように小型アコにも品質の良しあしがあります。 比較すると小型アコで品質が良いものというものが絶対数として少ないのは圧倒的にある学校アコのレベルの安物が横行しているからで、それはそれなりの存在価値は認めますが、大型アコで耳が肥えている人にはストレスがたまる確率が非常に高い。 小型でも品質の良いものは価格がそれなりに高い。 結局大型アコと小型アコではリードの数の差はあるものの、製造工程はほぼ同じ。 作る部材の使用料は減るものの、製造コストはリードの数と正比例はしないことも、高級小型アコの割高感にもつながっているものと思われる。 どうせ高いお金を払うなら少しでも大きいアコのほうがお買い得という気分になるのはもちろんわかりますし、おそらく正しいと思われます。 ただし、大型アコを買って、重い、運べない、引っ張り出すときにいつも「どっこいしょ!」と掛け声をかける、弾きたいと思う気持ちが起きたときにさっと取り出せないので、「ま、いっか、こんつぎにしよう」ということで、せっかくのアコを弾くタイミングを失ってしまい、ついには押し入れに大事にしまわれて、カビと湿気でぼろぼろにしてしまうアコって結構あるのです。 大型機でなくては出せない音色や肺活量の大きさはこの際ある程度あきらめて、その軽さの価値というものに気がついた人には、大型アコでは経験できない小型アコとのまったくあたらしい人生が待っている。 そんなときに、小さいくせに高いのが気に入らないと思わないで、思い切って少しでもグレードの高いアコを買うのが小型アコとのあたらしい人生を永く楽しむコツだと思います。 この認識はなかなか受け入れられないことが多いのですが、この事実に気がついた人はもうとっくに小さなアコとの素敵な旅に出かけている。 伊藤恵子さんのように。 彼女の場合は豪華客船クルージングのディナーコンサートなどでピアノ演奏をなさるかたわら、突然アコで演奏などを加えることで、お客様のボルテージを一気にあげてしまう演出をなさるそうですが、お客様の反応が目に見えるようです。 脇役のはずのアコが主役に変身する一瞬で、アコ好きの小生としてはうれしい演出です。 アコ弾きもアコ一辺倒でなく、聴く人の立場になって、いろいろと演出をするとさらにアコの魅力をアピールできるという部分があるのかもしれないというヒントをいただいた次第。 たまには元カノとデートすると奥さんとの外出が新鮮になる、などというのはやや危険を伴うので、各人の判断と責任においてやるように。
http://www.sonorite-du-piano.com/diary.html#001
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