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Horovicka Heligonka  投稿者: 川井 浩  投稿日: 8月13日(土)16時44分49秒
チェコのDelicia社のあるHorovice市(ホロヴィチエ)はプラハの西約30kmに位置している。そこで今月の19日と20日に市をあげてのアコーディオンフェスティバルがあります! その名も"Horovicka Heligonka"。内外から多数の演奏家が参加する盛大なアコフェスティバルなんだそうです。うーん、あと一週間滞在を伸ばしたい! たまたまチェコに旅行を計画している人は是非ちょっと足を伸ばすことをお勧めします。 ところで、聞くところではチェコでは年間を通じて数百とも言われるアコフェスティバルがあるのだそうで、本当にアコーディオンが国民というか民族というかみんなの生活の一部になっているのだなぁ、と感じます。 ポップ、ディスコ、テレビ、パソコン、ゲームイボーイ、プレステなどの娯楽はどんどん押し寄せているもののいまだに根強いアコをベースにした音楽による人々の喜びの共有が強く存在しているこの国にきて、物質的に豊かでも一人一人がばらばらで他人への思いやりもなくなって、若者が将来への夢も描けず、家庭や地域・親族・友人関係といったゲマインシャフトが会社勤務というあたらしいゲゼルシャフト的奴隷制度に圧迫され、ゲーム感覚で強盗は殺人が横行するわが国の現状とにらみ合わせるといったい本当の豊かさってなんなんだろう、われわれはとうに大事になものを見失っていると強く感じます。 おぉっと、硬い話はそれぐらいにして、こんなアコフェスティバルを体験すると単にアコ演奏を聴いた以上のものを得られると思います。 ビールもうまい。 Pilsner Urquell、Budweiser(アメリカのBudweiserはニセモノです!)、その他まだ日本では無名のビール群たち、アコを言い訳にビールの旅としゃれるのもチェコ旅行の楽しみかもしれません。
チェコといえば有名な愛国作曲家でスメタナがいる。 その「愛国」ということばのなかに、その言葉の無いメロディーのなかにこの国が大国のエゴのなかで翻弄されつづけながらもその音楽のなかに民族の誇りと人々の連帯(Solidality)を祈り続けた作曲家の心を強く感じます。 プラハの中心を流れるモルダウ河を渡ったとき、その河の名前を知っているかと聞かれ、たしかモルダウでしょう、と答えたら、怪訝な顔をされ、モルダウ? 聞いたこたねぇな、これは「ヴルタヴァ」だ、とおっしゃる。 念のため、スメタナの「モルダウ」の一節を♪たら〜らら〜ら、ら〜ら〜ら〜ら〜♪(すいません音がでなくて)と口ずさんだら、「さうだ、それだ! ヴルタヴァだ!」。 またその反応がすごい。 チェコの人の心にはスメタナがいて、その音楽があって、その「ヴルタヴァ」の名前があるのだなぁ、とあらためて思いました。 そりゃぁ、ジャパニーズ、スシバー、ワンダフル!なんていわれるより、築地で握りでもつまむかぁ、なんていわれるほうがよだれのでかたがちがいますもんね。あまり関係ないか? 第一次世界大戦後の混乱がおさまって、不安定ながら、ヒットラーの親衛隊の不気味な足音が聞こえてくるまでのわずかな時間花開いたチェコの、そしてチェコのアコーディオンの爛漫と咲き誇りかけたそのいい時代、ベルエポック、がソ連崩壊後、政治経済の建て直しをはかるなかで、今後この国がどうなるのか不安があるものの、そして、まだまだ問題や山積しているものの、今が長い歴史のなかで一番いい時代だ、みたいな顔をしているこの国の人たちを見るとこの国と、この国のアコーディオン文化が長く続くことを心から祈らざるを得ません。

調律の仕上げ、チェコのアコフェスティバル  投稿者: 川井 浩  投稿日: 8月11日(木)08時13分19秒
今日はベース部のリードの調律をやりました。 低音のベースの調律は特に難しいです。 ところで、今回調律に使用した調律台はDelicia社自製のもので、もともとチェコのアコーディオンEngineerの開発によるもので、1930年代にはこれと同型のものがHohnerに移籍したチェコ人のアコーディオン技術者とともに納入されている。 かの有名なGolaもMorinoもこの調律台でリードベースの調律をしていたといわれています。 もちろん最終調律はアコに組み込んでの調律となりますが。 今回私が2日間で受けた調律レッスンはリードフレームベースの第一次調律と呼ばれるもので、これで9割以上の調律が完成し、あとの仕上げはやはりアコに組み込んでの最終調律となります。 今回はまだそこまでは出来ませんでした。 次回第2ステップとしてアコ組み込み後の調律のレッスンを受けることになりました。 今回あらためて驚いたのは調律をするのに周波数計などの電子機器に頼るのではなく、あくまで耳による調律であったことです。 耳の訓練の初歩を習ったといえるでしょう。 アコを聞くのは最終的に耳。 このアコースティックな音を聞いて良し悪しが判断できないとそもそもアコの調律なんてできない、というまさにガテン職人の世界。 徒弟とマイスターといった古い伝統的な技術継承がここにも息づいていると感じてあらためてアコというものは人間の感性と密接に関係する楽器なんだなぁと思いました。 で、マイスターであるDelicia社長の調律は神業に近いスピードと正確さで圧倒されます。 彼に、何度も何度も調律するうちに判断できる耳ができてくるとおだてられ、さとされ、しながらなんとか2日間にわたった調律丁稚入門の第一回目は終了しました。 後は本業で出張したら何日かまたこちらにお邪魔して第2次修行をさせてもらうことにしています。 本日は運良くDeliciaの社長の紹介で来年4月に開催されるプラハアコーディオンフェスティバルのオーガナイザーの社長にもお目にかかれたので、この由緒あるプラハアコーディオンフェスティバルにつき、別途ご紹介します。 いまや、プラハはヨーロッパ屈指の日本人の訪問先となっています。 「城」を見上げる、モルダウ河(チェコ語ではウ”ルタバ)にかかるカレル橋は行きかう日本人であふれんばかりで、もしかしてここは日本橋か?とおもえるほど(ところで、東京の日本橋は悲惨ですね! 歴史や伝統を重んじない日本人の恥だと思います!)。 旧市街のアールデコ調のカフェも広場も日本人で一杯。 こんなに人気のあるプラハにいって、ついでにアコーディオンアンサンブルフェスティバルの陶酔の2日間を味わえるなんて、すごい! 私もツアーコンダクターをやりたいぐらいです。 このフェスティバルにはロシア、ドイツ、北欧、オランダ、スコットランド、オーストリア、イタリーなどから多数のアコ楽団がおとずれレベルはものすごく高いとの評判です。 なぜかフランス人のアコ楽団の参加が少ないのは、フランス語のサポートがないためで、フランスの演奏家はフランス語が通じないところには一切出向かないという傾向があるようです。 まぁ、お国柄でしょう。 シャルトルだけがメッカじゃないということです。 もっとも、チェコには年間を通して100近いアコーディオンフェスティバルがあるそうで、DeliciaのあるHoloviceの町でも8月19日と20日は町をあげてのアコフェスティバルがあります。 ここにも内外多数の参加者があるとのことで、この時期にチェコに行く人にはラッキーなタイミングでしょう。
ところで、DeliciaがいまやHand Madeの高級アコ製造メーカーに脱皮している最中であることはすでに述べましたが、すでに音楽学校の教師とか、プロの演奏家にも採用が始まっており、リードも入門機としてのスタンダードリードから、超硬質アルミ合金リードフレームのスペシャルリード、ハンドメードタイプの高級リード(Tipo A Mano)、純正ハンドメード(A Mano)を使用したカソットモデルやフリーベースモデルのDinetaなどを投入していて決して侮れない。 Tipo A Manoリードでカソット付きのモデルなどを今回は発注したので、JAAのサマーフェスタでは皆様に試奏していただけます。 その音色と価格のコストパーフォーマンスはかなり衝撃的なものになるといまから期待してください。 なんといってもExcelsiorをはじめ有名ブランドのアコの下請け生産をながらく続けてきたメーカーですから、品質・性能はばっちりで、ブランドが若いこと、チェコの合理的生産体制と人件費の安さなどからお安くご提供できる予定です。 もっとも、数年後に予定されているEUへの仲間入りをすると一変にコストが上昇することが危惧されます。 Deliciaをお得に買うならEUへの仲間入り前というのがちょっといい話かもしれません。

文化  投稿者: yoshi  投稿日: 8月10日(水)08時17分16秒
川井様の文章の行間に、チェコへの尊敬の念と共感がにじみ出して伝わってきます。皆、アコーディオンに限らず、何か一つぐらい凝っていることがあると思うのです。でも、Deliciaの社長さんが持っているような、深い思いで関わっている人は、少ないと思います。特に、日本では。熱く語り出すと、すぐに「オタク」のレッテルを貼られてしまいますものね。殺伐とした世の中でも、そうだからこそ、お互いの想いを聞きあえる、共感しあえる、心の余裕を持ちたいものだと思いました。私は、とりあえず、アコーディオンの音色で、歌で、自分の想いを熱く伝えられるように、練習にはげみます。
川井様も、武者修行頑張ってくださいね。

Hlavacek, Keberle -> Delicia  投稿者: 川井 浩  投稿日: 8月10日(水)06時34分40秒
DeliciaのDiatonicアコの高級モデルにHlavacekというモデルがある。Deliciaの社長からアコ調律の特訓をうけている休憩時間に「あのぉ、Hlavacekってなんつう意味ですかぁ?」なんて質問をしたら、彼は当惑した顔をして、即座に答えてくれなかった。それには深ーい訳があることは後で食事時にゆっくり教えてもらったチェコのアコの歴史に深くかかわることで、一口には表現できなかったからだった。 現在のチェコはスロバキア、南チロル(現イタリー領)、旧ユーゴスラビア領、ハンガリーなどと同様、かつて欧州最大の国家として栄えたオーストリア・ハンガリー帝国の領土の一部であった。政治・経済の中心はもちろんウィーンであったが、工業の中心はチェコであった。 サラエボでオーストリア皇太子夫妻がテロの銃弾に倒れ、第一次世界大戦に突入し、ながい泥沼の殺戮戦を終え、ついにオーソトリア・ハンガリー帝国が解体されるにいたり、やっとチェコはスロバキアとともに独立国となり、チェコスロバキアとなる。 その後もチェコは工業の中心であった。 古くから機関銃や自動小銃、自動車、などを開発製造し、小国でありながら高い技術水準を誇っていた。現在でもベンツ、フォルクスワーゲンなどがチェコに進出していることからもこの国の技術力の高さを知ることができる。 いまでは忘れ去られてしまったようだが、世界的に高い評価を得ていたアコーディン産業が第二次世界大戦前のチェコで爛漫と咲き誇っていたことを知る人は少ない。 1860年にはAntonin HlavacekがLouny村でアコ生産を開始、Keberleは世界的に有名なアコを製造して当時のScandalliにもOEM供給していた模様。そのほかに数社アコメーカーがあったらしいが、すべてHitlerによって解体され、製造を中止させられてしまった。 Hilterが去った後はStalinがチェコを他の東欧諸国同様属国化し搾取・蹂躙し続けた。 1960年代の終わりにドプチェク、ベラ・チャフラフスカさんなどが活躍して「プラハの春」といわれる平和無血革命を起こそうとしたが、当時のロシアにまたも踏みにじられた。 その後またまた永いつらい共産主義という名の奴隷のような生活を強いられてきた。 そんな中でもDeliciaとしてチェコのアコの歴史を継ぐべくスタートしたアコ産業は当時はロシアへの貢物工場としての製造が中心だった。 やっと旧ソ連の崩壊、ベルリンの壁の崩壊、をへて、やっと再度自由主義のもとに独立したチェコスロバキアもスロバキアの民族主義からチェコとスロバキアに分離して再度独立。 旧共産圏向けが中心であった当初の大量生産のDeliciaのアコは現在はHand MadeのHigh Qualityを志向して市場を広げている。Excelsiorをはじめ有名アコブランドのかなりのものをOEM生産しているのも技術力、品質管理が高い評価を得ている証拠だ。 Delicia社長としてはイタリーのどのメーカーをしても自分は太刀打ちできると自身満々だ。 Delicia社長から説明をうけて、同社のDiatonicアコのFlag ShipモデルにHlavacekという製品名をつけている同社の心意気をやっと理解することができた。 そりゃぁ、一口じゃぁ、説明できないわけだ。 日本で戦争体験のある人が「戦争ってどんなでしたぁ?」なんて便所でつれしょんしているときに聞かれたって一言では答えられないのと同じことでした。 第一次世界大戦が終わり、ヒットラーが侵攻してくるまでのわずかな間、チェコに一時平和な時代があって、プラハの街にはアールデコ様式のホテルやカフェが立ち並び、待ち行く人にはHlavacekやKeberleの素敵なアコの音がバーやカフェーからながれていた、そんな時代があったのです。そんなアコが世界中に輸出もされていたわけです。今、Deliciaがそれを引き継いでやろうとしている、というお話でした。

アコ調律特訓一日目  投稿者: 川井 浩  投稿日: 8月10日(水)03時37分23秒
昨日チェコのプラハに入り、整備・調律済みのアコをいくつか仕入れたりしていたときは楽しかったのですが、今日は朝8時から夕方6時半までみっちりDeliciaの工場でアコ調律の特訓第一日目。これまである程度はできると思い込んでいた自信ははじめの10分で吹き飛びました。 朝はじめて夕方終わるまで「え”〜、そうなの〜!」とか「あ”−!そうするんだぁ!」 とかの連続。 Know-Howと知恵と経験にもとづく情報と技術。 耳、指先、手先、目、など神経を鋭敏に集中し、行う調律作業は楽しいけどめっちゃ疲れます。 理屈だけでなく、やはり場をこなすこと、やり続けることが大事だし、当然効率も要求されるわけです。 今日はトレブル側の調律を何とか終えたので、明日はベース側の調律の予定。 でも、この修行、極めて楽しいです。 だーすきなアコーディオンの調律ができるということは健康管理、お医者さんができるというとこですから、早く皆様のお役に立てるようにがんばります。

生き抜くためのアコ  投稿者: 川井 浩  投稿日: 8月 8日(月)15時39分58秒
今朝は朝一番のフライトでZurichからPragueへ向かうため、朝6時45分の列車に乗るためZurich郊外の鉄道の駅にきたら地下道ですでにアコを弾いている人がいる。 アコはメーカー不明(バルカン製だと思われます)でレジスタも無いタイプのかなりの年代物。アコ弾きの顔色は浅黒く身なりも薄汚れている古着で、おそらくバルカンからの移民であると思われる。曲は始めも終わりも良くわからない、聞いたことがない曲だが、音の調子からして旧ユーゴかその他のバルカン諸国の音楽と思われる。どこか悲しげなメロディーに強烈なベースの指使いがすごい。生活費のためのコインを求めて弾いているわけだが、朝の出勤の人々はどちらかといえば迷惑顔だ。かたや命からがらか、生活に困ってかどうかは不明だが国を捨て、アコ1台を担いで着の身着のままスイスにもぐりこんだ難民というか、ほとんど不正入国者にとっての命綱としてのぼろぼろのアコと、それらの背景と事情は理解できるが自分たちが汗水たらしてやっとつかんだ静かで豊かな暮らしのなかでこのような怪しげな部外者の侵入に困惑するスイス人の立場の両方を感じて、いつもながらやるせない思いに襲われる。 同じ民族とはいえ、また、本来うれしいはずの東西ドイツが統一された後のドイツ国民の苦悩とか、いままだ分断されている朝鮮半島が統一されることを望むことが大義名分でありながら、本音では統一してほしくないと願う韓国・朝鮮の立場やその周辺諸国や大国のエゴ、厳しい入国管理で外国人の流入を防いでいる日本の現状の是非など、想いは抜本的解決策の無い、やるせない人間世界の現状へと向かってしまい、朝から気が重い。 のんきにアコなんか弾いていていいのかなんて思い始めるとたまらなくなるときもある。とはいえ、短い人生。いい音、いい楽器、いい音楽、いい人にめぐり合って少しでも心に栄養と、ちょっとの贅沢をさせてあげても許してくれますよね、神様。

テロ  投稿者: 川井 浩  投稿日: 8月 6日(土)04時10分30秒
ミラノのマルペンサ飛行場では待合室の隣の5−6人がアラブ系、これにアフリカ系が加わり、なんとなくいやーな雰囲気でしたが、なんとか無事スイスに到着。 朝の外気温12℃。 昼は久しぶりに晴れたとかで24℃。 快適です。 でも時差でぼろぼろ。 帰りもミラノ経由なので今回はちょっとびくびく。 到着まもなくドイツHarmona社から連絡があり、発注しておいたWeltmeister Monteシリーズができたので発送すると連絡がありました。これまた立派なアルペンアコで、ヘリコンベースがずんずんくるタイプ。 帰国が楽しみ。

http://www.harmona.de/


北海道頑張って!  投稿者: アンドレ  投稿日: 8月 5日(金)09時56分57秒
ZEN@様アコの調律に挑戦とは驚きです、北海道には調律が出来る所が無いと伺っていますので、是非ものにして下さい。
20/21日札幌に行けなくなって残念です、2月の熱気が忘れられなくなんとか機会を作ってお会いしに行きます。

川井さま、次はイタリーとかテロ組織が云っている様ですから十分お気をつけ下さい、楽しいご旅行を!! Bon Boyage!!

http://www2.starcat.ne.jp/~wani/sumiya/sumiyatop.htm


Milanoで乗り換え中  投稿者: 川井 浩  投稿日: 8月 5日(金)02時58分15秒
いまMilanoのAirportに到着し、Zurich行きのフライトを待っています。 まわりはほとんどイタリー語ばかり。 来週にはPrahaに入り、その後HoloviceのDeliciaで修理と調律の特訓を受ける予定。 その後、南チロルのSextenでLanzinger社の出荷検査に立ち会う予定です。 人相の悪そうなやつがいると自爆テロじゃないかと疑ってしまいます。 自分の人相もあまりよくないかもしれないので他の人も疑心暗鬼になっているかもしれないけど.... 飛行機の旅行も物騒になったもんですね。 困ったもんです。

なるほど  投稿者: ZEN@北海道  投稿日: 8月 4日(木)20時45分34秒
チャンバーはBOSEのスピーカーシステムにも共通するところがありますね。
調律台のようなものでピッチを合わせても最終的にはアコーに組み込んで
調整しなければならないので、ものすごく手間のかかる作業なんですね。
ということで、あたくしいまそのリード調律台を制作中であります。