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8月に入るとイタリーは夏休み。商店も工場もほとんどしまっていて、Anconaの街にも人影が見えない。そのかわり、浜辺は人だらけ。Castelfidardoのアコメーカーはどこも休暇に入っており、街はひっそりと静まり返っている。一人Fantini社のみが休暇前の作業を今週だけやっていた。写真は同社のショールームに案内してくれた社長夫人と新人秘書のPamelaさん。Fantini社の歴史はアコ用木工部品の下請け製造から始まり、アコ完成品のOEM生産(他社ブランドアコの下請け製造)をへて、1980年から自社ブランドアコの製造・販売へと発展して来ているが、基本的には家族経営の小規模なアコ工房である。大量生産でないかわりに柔軟に顧客の希望に応じて製造できるところが強みである。アコに大事な木工技術では大メーカーに引けをとらない。心臓部分のリードは大メーカーと同じところから購入している。仕上げのチューニングは以前は社内で行なっていたが、現在は専門の独立プロにやらせている。小規模メーカーではすべてを自分で製造することなく、専業のプロにアウトソーシングで委託する形が多いようだ。現在の主な輸出先は英国、北欧、ロシアなどヨーロッパが中心。主要市場のドイツには出遅れているがそれには訳があった。上記にのべたOEM生産はドイツのKrattであった。KrattはHohnerにつぐ高品位アコという定評があったが、約2年前のドイツの経済危機で撤退を余儀なくされた。その大手OEM客先Krattを失ったFantini社はドイツ市場についてはあらためて販売ルートを構築中である。Kratt社への納入実績からするとドイツには延べ5,000台以上の出荷実績を持つとのことで、これはReferenceとしては十分説得力がある。欧州で活躍するプロのなかにもFantini社製アコで活躍する人は少なくない。同社の製造するBayanは高級バヤンとしてロシア、東欧でロシアのJupitar製Bajanよりも評価が高い。 小生もFantini社のアコについては同社製品をそのまま日本に持ち込むのではなく、いろいろ欲張って次のような仕様のモデルを発注しました。 「ミ」から始まる38鍵、120ベース、重量はMax10kg前後、黄色に変色しない高級エポキシグラス製鍵盤、 軽いタッチを約束する木製キーボディー、ボディカラーは落ち着いた黒だが、人口宝石装飾で豪華、HMMLの4リードは高級ハンドメードタイプリード、Fantini社独自開発KK型カソット(チャンバー)、心地よいイタリアン・チューニング。 「ミ」から始まるので、歌謡曲やジャズ、クラシックにも低音の心配が無い。同社独自開発KK型カソットとは通常のカソットに比べて、チャンバーの形状がメガホン型になっているため、音の広がりと音量がさらに大きい。大型チャンバータイプアコにありがちなドライ(フラット)チューニングは好き好きだが、ジャズやクラシックには向く反面、叙情的な曲には味気ない場合が多い。そのため、あえて、心地よいトレモロを約束するイタリアン・チューニングを選んだ。もう一台は37音・72ベースのコンバータータイプの小型C型ボタンアコ。HMLの3リード。これが小型な割りに迫力がある。コンバータータイプなので、普通のストラデラベースでも弾けるし、徐々にフリーベースにチャレンジもできる。フリーベースができちゃうと、普通のブンチャッチャだけでは満足できなくなる。さりとて、普通のまともなコンバータータイプのアコは高級品過ぎて手が出ないという場合が多い。手が届く価格でボタン式高級コンバーターアコを提供しようというアイデアです。入荷予定は夏休みが間に入るので10月末から11月の予定。これまでにないコンセプトのアコを高品質で提供できるのがFantini社の強みだ。楽しみ楽しみ。 高品質といえば、ExcelsiorはこれまでもチェコのDeliciaなどへ下請け生産を委託していたが、昨年末倒産し、Pigini社がExcelsiorブランドを買収したところまでは聞いていたが、今後のExcelsiorブランド製アコはどうもルーマニア製の部品をイタリーで組み立てるということになるらしい。 ルーマニアの木工技術やメカがどの程度の品質なのかは未知数ながら、価格を抑えて生き残りをかけるPigini社の戦略が吉とでるか凶とでるかは今後の動向を見極める必要があるだろう。FANTINI社では少なくとも100%イタリー製だ。
http://www.fantiniaccordions.com/
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